次期世界ヘビー級チャンピオン
マイケル・グラント   
MICHAEL GRANT
        のトレーニング法

 今までのボクシングの常識を
 くつがえす科学的トレーニング法

         

     JUNE Issue

「飲まない、吸わない、薬をしない、
健全型ボクサー」

     原本執筆: キャロル・アン・ウェバー
     翻訳編集: 
S&F MAGAZINE
     写真:Musclar Development

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チャンピオンへのトレーニング法

ボーコウスキーとホールマーク氏は、協力し合ってマイケルの為に特別なトレーニングプログラムを作りました。
「マイケルは大きくて力強いのですが、今迄ウエイトトレーニングをした事が無かったんです。 だから大仕事になると思っていました。 しかし彼が意欲的にトレーニングに励んだ努力の結果、今では実を結んでいます」と話すボーコウスキー氏。 「多くの人は、マイケルは何でも気楽にものを済ますタイプと見ていますが、実際はそうではなく、リングの上でもトレーニングジムでも命懸けの姿勢ですよ」と、ボーコウスキーは続けます。

マイケルの試合までのトレーニングは、2つに分かれます。 


 第1段階
 トレーニングキャンプ前  試合12週間前より

 パワートレーニング (月、水、金曜日)
  最大筋力の80%で8レップスを3セット

  月曜日
   大胸筋
     ダンベル・ベンチプレス
     ダンベル・フライ
     ペックデック
     ケーブル・クロスオーバー
   肩
     アーノルド・プレス
     ショルダープレス・マシーン
   上腕三頭筋
     オーバーヘッド・バーベルプレス
     ケーブル・プッシュダウン
     ベンチディップス
  水曜日
   背中
    ラットプルダウン
    リバースグリップ・ラットプルダウン
    ワンアーム・ダンベルロー
    アップライトロー
    リバース・ダンベルフライ 
    シュラッグ
   上腕二頭筋
    ダンベル・カール
    バーベル・カール
  金曜日
   脚
    レッグエクステンション15回x3セット
    ワンレッグカール
    ウォーキング・ランジ
    スミスマシーン・スクワット
    シーテッド・カーフレイズ
   腹筋
    腹筋は毎日行います。
    クランチ
    スーパーマン
    このエクササイズは昔ながらのボクシングのトレー
    ニング法で、シュガーレイやモハメド・アリの頃から
    のものです。 マイケルはこれを50回繰り返します。

  第一段階の目的は、筋肉筋量を増し持久力を高める事です。
  実際にキャンプに突入する頃には90%の仕上がりになって
  います。 キャンプ前の1日は次のようです。
    9:00 am   ストレッチ
    9:30 am   シャドーボクシング
   10:00 am   バッグ打ち
   11:00 am   カーディオワーク(ロープ等)
   12:00 pm   昼食、昼寝
    3:30 pm   ウエイト・トレーニング

 


 第2段階 
 トレーニングキャンプin 試合8週間前より

  コースA サーキットトレーニング (月、水、金曜日)
  下記のエクササイズは全てマシーンで行われます。
  中から軽めのウエイトで15回を3セットし、セット間は1分休む

  レッグエクステンション
  レッグカール
  ウォーキング・ランジ
  スタンディング・カーフレイズ
  ドンキーレイズ

  チェスト・プレス
  ラットプルダウン
  リバースグリップ・ラットプルダウン
  ダンベルロー
  ダンベル・シュラッグ
  ショルダープレス
  ライイング・ダンベルレイズ
  (インクラインベンチの上で)
  腹筋運動(毎日行う)

  コースB  カーディオバスキュラー (火曜、土曜日)
         スパーリングの無い日

  シャドーボクシング(1時間弱)
  ランニングもしくは水泳(1時間弱)

  キャンプ中の1日
   8:00 am    朝食
   9:00 am    ストレッチ、バッグワーク
  10:00 am    スパーリング
  12:00      昼食
  1〜3:00 pm   昼寝
   3:30 pm    サーキット・トレーニング
   4:30 pm    プロテインドリンクを飲む
   5:00 pm    ランニングもしくは水泳
   6:00 pm    夕食

ボーコウスキーとマイケルは、一日に3マイル(4.8km)以上走る事に反対します。 「理由は筋肉を消耗するだけでなく、疲労で困憊する事になるからです」と話すマイケル。 しかし走る時はリング内と同じく競争心一杯に励みます。 
通常マイケルは、3マイルを24分以内で走りますが、キャンプの最後には21分台で走るです。 これは、彼の114kgの体重を考慮すると、実に凄い事です。
他のユニークなトレーニングとしては、水泳がプログラムに組み込まれている事です。 これは「ヘビー級は走り過ぎると関節が痛む」という根拠から加えられたものです。 ボーコウスキー氏が言うように、マイケルが最初水泳を試みた時は、泳ぎにならなかったそうです。 しかし今では優れた運動神経のお陰で、マイケルはスイスイと泳ぐそうです。 
 
栄養面

栄養面の管理に関しては、出来るだけシンプルにすべきとボーコウスキー氏は考えます。 マイケルは、元々栄養学の基礎知識が有り、正しい食事法を行っている為、ボーコウスキー氏がとやかく言う必要は無いそうです。
唯一管理しているのが、毎日欠かさずビタミン剤を摂る事と、ボクシングとウエイトトレーニングの後は、500gの炭水化物ドリンクを摂取する事です。

昔からの伝統的やり方 VS 現代の科学的やり方

長年ボクシング界で議論されている、「ボクサーはウエイトトレーニングをするべきか?」という疑問に、マイケルと彼のトレーナー達は、「ウエイトトレーニングをすべき」で意見が一致しています(勿論ボクシングに合った特殊なプログラムが必要ですが)。 古い考えでは、「ウエイトトレーニングは筋肉が硬くなり、スピードをにぶらす」というものでしたが、エバンダー・ホリフィールドが実証してきたように、1.パワーは打撃力を増し、2.筋肉の鎧は打たれ強くなる怪我の防止対策となり、3.それが結果的に肉体を酷使するボクシングでの選手生命を延ばす事に繋がるのです。

ウエイトトレーニングが本当にマイケルのパンチ力をアップさせたの?の問いに、ボーコウスキーは、「そりゃそうサ!一度間違ってマイケルのパンチを貰った事が有るけど、ノックアウトさせられてから1週間は調子がおかしかったヨ。 しかしあれでもマイケルは本気で殴ってなかったんだよね・・・」と、答えました。 
ボーコウスキーは、「ウエイトトレーニングは柔軟性に気を付けて行えば、パワーとスピードが上がるんです。 実際今の若手選手を見れば歴然ですが、皆ウエイトトレーニングをしています。 筋肉を付ける事は、怪我の予防に最適です。 事実、この間のサバース戦の翌日、マイケルが試合をした様に見えないと妻が洩らした程です」と話します。

マイケルがボーコウスキーをトレーナーとして迎えて以来、11kgの筋肉増強を達成し、ボクシングの戦歴も目覚ましい勝利を納め続けています。 (ボーコウスキー曰く、”マイケルは日増しに強く、上手く、自信に満ちてきてい ます”との事)。 筋力と筋量を究極のバランスで備えるヘビーウエイトボクサーと言われるように、マイケルは年間を通じ体脂肪率を5%以内に留めます。 
たと えオフシーズンでも2.5kg以上体重が増える事はないそうです。 では後何をする必要が有るの?という私の問いに、「チューニング!(微調整)」とトレーナー。 

キャンプ中は、マイケルのスピードとコンビネーションの向上に重点が置かれます。 後は経験を積むだけとトレーナーが言うように、マイケルにはもっと経験を積む必要が有るのです。 そうすれば近い内にその頂点を極める日が来るでしょう。
頂点を極めると言えば、現在ヘビー級王者レノックス・ルイ-スですが、彼とマイケルは2000年4月29日に対戦します。 ボーコウスキー氏は「今のマイケルなら行けるだろう!」と興奮気味です。 しかしマイケルは、忍耐と謙虚さを忘れてはならない事も良く理解しています。 そうすればいつか勝利の女神が微笑むと・・・。

私達は未だマイケルの本当の強さを見ていません。 恐らくそれは、彼が究極の対戦相手と遭うまでは閲覧できないでしょう。 死ぬか生きるかの瀬戸際で、マイケル・グラントは試され、ニューミレニアムの王者の座を手にするかどうかです。 それは勝利の女神のみぞ知る領域です。 しかしマイケルを囲む者は、マイケルには勝利の女神が付いていると信じて疑いません。 私もその中の1人です・・・。  END