2001年11月号

ソース元:Muscular Development
原本執筆:パトリック・アーノルド
翻訳編集:S&Fマガジン(T.M)

  テストステロン革命
       男性だけに有効ではない、 女性にも有効である!

最近インターネット上で女性に男性ホルモンを生理不順の療法として投与する実験について議論があったので参加しました。
テーマとなった実験では45名の女性に少量の男性ホルモンを投与し、どの様に問題が解消されるかを観察したものです。
通常この手の問題を抱える女性は、骨粗症も患っています。 それ故男性ホルモンを投与する事で、骨の密度も上がるのが期待されたのです。
ネット上での議論を閲覧し、先ず感じた事は、非常に間違った考えを男性ホルモンについて世間は持っているという事です。 そこで私は自分なりに男性ホルモンについて調査を開始する事にしました。

調査を開始して分かったのですが、男性ホルモンを女性に投与する研究は、何と20世紀の初頭から行われているのです。 これには結構驚く人がいるでしょう。 何せホルモン療法というのはつい最近社会的に認識され始めたばかりなのですから。 

男性ホルモン療法が女性に処方された当初の目的は、更年期障害後のほてり、倦怠感、うつ病、性欲減退を治療するのが目的でした。 大抵はエストロジェン(女性ホルモン)とアンドロジェン(男性ホルモン)のコンビを投与しており、それは遥かにエストロジェンのみを単体で投与するより効果があったのです。 しかし残念ながら、これら実験からは好ましい結果は得られなかったのが殆どです。 特に副作用として肉体が男性化したり、血中のコレステロール値が上がったりする事がしばしあり、本格的にホルモン療法が利用される事はなかったのです。 ところが20世紀後半になると、これらホルモンは投与量を抑制する事で、非常に有益な効果が得られる事に注目され始めます。

<ホルモン>

素人が精力増強ホルモンについて尋ねられたら、男性には男性ホルモン、女性には女性ホルモンと言うでしょう。 しかし実際は男性も女性も両方のホルモンが必要なのです。 女性は1日に0.5〜1.2ミリグラムの男性ホルモンを、主に子宮と副腎で作り出し 一方男性はその10倍にあたる3〜12ミリグラムの男性ホルモンを毎日作り出しているのです。 女性ホルモンに関しても、同じく男性も女性も体内で作り出しています。

<歴史的背景>

エストロジェン(女性ホルモン)が最初に人工的に製造されたのは1920年代の事で、更年期障害の処方として 用いられました。 一方男性ホルモンが人工的に製造され始めたのは1935年で、これも女性の更年期障害を治療する目的で開発されたのです。 当時これら2つのコンビネーションは、更年期障害の症状を治療するのに目覚しい効果が確認されています。

1940年代、男性ホルモンと女性ホルモンのコンビネーションは、更年期障害後の女性の精力減退を快復させる為の処方として確立されました。 その効果は性欲を快復させただけでなく、性器を敏感にさせ、尚且つ性的な喜びも増加させたと報告されています。

1950年代に入ると、更にこれらホルモン療法の実験が盛んになります。 問題はこれら実験開始当時、大量投与から来る副作用が当時付きまといます。 1941年の記録をさかのぼると、この当時1週間50ミリグラムもの男性ホルモンを女性に与えていました。 これは現代の基準からすると非常に多い投与量です。 又他の例では、1日10ミリグラムというものもあります。 考えられない投与量です!その後40年代の中頃には、投与量は1日5ミリグラム程度まで下げられます。 しかしそれでも多過ぎます。 
この当時の副作用例としては、声が太くなる、ニキビ、顔の毛が濃くなる等が報告されております。

1970年代になると、これらホルモン療法はかなり定着し、害の少ない方法で評判を得る事となります。 そして1980年代には、子宮を病気で除去した女性へのホルモン不足を解消する為の手段とし、男性ホルモンと女性ホルモンのコンビネーションが利用されるようになるのです。

<血中コレステロールについて>

男性ホルモンは血中のコレステロール値を上げる作用があると信じられ、一方女性ホルモンはその逆で血中のコレステロール値を下げる働きがあると信じられてきました。 この理由から男性は女性に比べ動脈硬化で亡くなる率が高いと当時理屈付けられたのです。 そこで1980年代に入ると、この信じられてきた事が事実なのか検証する実験が始まります。

先ず1つのグループは女性ホルモンのみを投与され、もう1つのグループは男性ホルモンと女性ホルモンのコンビを投与されました。 その結果女性ホルモンのみのグループでは、善玉コレステロール値が上がり、同時に悪玉コレステロール値が下がったのに対し、コンビネーションを与えられたグループでは善玉コレステロール値がわずかに下がり、悪玉コレステロール値がわずかに上がる事となります。  しかしそれでもコンビネーションのグループは、全体的なコレステロール値では低下するという結果になったのです。
これは男性ホルモンを女性ホルモンに加えても、何ら良くも悪くも影響を与えないという事が証明された事となります。 そしてその1年後、違う研究で再び同じ結果が出る事となったのです。

<最先端療法>

1990年代以前は、男性ホルモンといえば更年期障害を治療する為に利用されるのが主でした。 勿論これは1960年代のソビエトや東ドイツなどで、スポーツ選手を対象に試されたケースは例外とします。 
ここ10年来は適正投与量が把握できる様になってきたので、随分と男性ホルモンの使用範囲が広がりました。 最近では何も更年期を迎える女性のみではなく、若くても肥満者、皮膚炎、骨粗症、エイズ、リウマチ、関節炎を患う人に投与する事となりました。

Female Androgen Deficiency Syndrome(FADS)とは女性の男性ホルモン不足症状で、医学界では既に認知された症候群です。 症状としてはうつ病、精力減退、ボケ、陰毛が無くなる、筋肉減少などで、これらは更年期障害後の女性や、子宮を手術で失った女性に良く見受けられます。 又女性は一般に歳をとると、この手の症状を訴える人も少なくありません。
医学界ではFADSについての認識はまだまだ薄く、これら女性にどれだけの男性ホルモンを投与するのが適当なのか指示すら明記されてないのが実情です。

一般に改革的な医者や老化防止を唄う専門家は、進んで男性ホルモンを女性に投与します。 カーリス・ユーリス医師はその例で、彼は性行為で局部が痛いと訴える女性(老若問わず)患者に、男性ホルモンのクリームを腕に塗ります。 カーリス氏曰く、男性ホルモンは皮膚を強くするとの事。 勿論陰部の粘膜も。 それが有効であるらしいのです。 専門家によるとこの手の問題に悩む女性は、全体の3分の1に達するといいます。 そしてこれら女性は、男性ホルモンを投与すれば回復に向かうケースが多々あると言われます。
更にカーリス氏は、男性ホルモンが肥満女性にも有効である研究を続けたきました。 カーリス氏によると、運動でも食餌療法でも痩せる事の出来なかった女性に有効である可能性があるそうです。 

古くからエストロジェン不足は骨粗症と深い関係にある事が分っています。 しかし未だ現代の科学を持ってしても、そのメカニズムは解明されていないのです。

<プロホルモン>

プロホルモンとは最近のサプリメントでも売られているアンドロステネディオンなどです。 DHEA(女性ホルモン)もそのたぐいです。 これらプロホルモンは、体内で男性ホルモンに変換されるもので、ホルモンの前駆物質と呼ばれます。 利用するのなら、クリニックで医師の管理のもと処方するのが好ましいでしょう。

 

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