2001年11月号

原本執筆:リチャード・クレイダーPhd
翻訳編集:S&Fマガジン

        2001年米国大学スポーツ医学協会によるサプリメントリポート!!

           最先端のパフォーマンスを向上するサプリメントを検証!

 米国大学スポーツ医学協会(ACSM)とはエクササイズを科学する世界で最も最先端を行く組織です。 その協会は毎年その道の
科学者や博士、専門家を招待し、最先端のスポーツ医学に関する研究報告や情報を交換し、情報の更新に努めています。

  ここ数年このミーティングの最大のテーマは、スポーツ栄養学となっています。 もちろん今年も例外でなく、スポーツ栄養学に関する
レポートは100の研究報告、そして11項目に渡る内容につき議論が繰り広げられました。 
  ここに紹介する記事は、そのミーティングの中で最も興味深いと思われた内容につき紹介しています。

<リサーチの信頼性>

  先ず提出されたリサーチを紹介する前に、お伝えしなくてはならない事があります。 それはミーティングで紹介された研究報告は、
その実質的結果をもとに幾通りにも解釈され得るという事です。 ミーティングでは実験結果を簡潔に報告され、抽象的な(あいまいな)
表現で結論を出しています。 又第三次的機関により研究内容の精密さを監査された訳ではありません。 ですからここに紹介された
結論とは全く別の結論が、別の同じ実験をしたグループより導かれる可能性があるという事です。
  信頼性の高い調査とは、プラシーボ(偽薬)や抜き打ち検査を精密に行われた場合を指しますが、残念ながらミーティングで紹介され
た幾らかの報告は、規模の小ささゆえの実験機器の不足による、精密さと信頼性に欠けた例があります。 ですからここに紹介する報告
の中には、間違ったものがある可能性がある事をあらかじめご了承下さい。

●クレアチン●

  ミーティングではクレアチンに関する研究報告が計28提出されました。 その内の9つはクレアチンの有効性に関するもので、残り
19は安全性とメカニズムに関するレポートでした。 以下が特筆された報告内容です。

⇒クレアチンはパフォーマンスを向上する
 9つの内8つはクレアチンの有効性を証明した研究報告で、中には素晴らしい実験結果が得られたのもあります。
 長期短期のクレアチン摂取は、ハードな運動に耐え得る能力を向上させ、最大筋力のアップも確認されています。 他にはサッカーや
水泳やソフトボールなど競技能力向上も確認されました。 それらは男女共に効果はあるというものです。 しかしたった1つの研究報告
では、クレアチンは短距離走のパフォーマンスを(それほど)向上させなかったと報告しています。

⇒クレアチンはオーバーワークを予防する
 最も興味をそそった研究報告とは、クレアチンがオーバーワーク(トレーニングのやり過ぎ)を緩和するという報告です。 その報告では
17人のウエイトトレーニングをする男性をもとに調査しました。 被験者は2週間に渡り、高回数制と低回数制のエクササイズを週4日
のペースで行いました。 クレアチンは、無差別にあるグループには本物を与え、別のグループには偽物をクレアチンと言って与えた
のでした。  結果はオーバーワークにありがちな血中のヘモグロビンと男性ホルモン値のレベル低下が、クレアチンを摂っているグルー
プでは摂ってないグループより遥かに優位なレベルを維持したのです。 又尿検査でも、クレアチンを摂ってないグループは酸度が高く
(タンパク質が失われた証拠)、クレアチンを摂っているグループは筋肉の減少を防いでいるという証拠になりました。
 これら理由に、クレアチンは激しいトレーニングに有効だという事でしょう。

⇒クレアチンは高齢者の骨の密度を増す
 骨の密度を増すというサプリメントや薬は、ほんの僅かしか市場にありません。 そんな中、クラッシ教授率いるグループが高齢者の
骨の密度に対するクレアチンの影響を調査した例があります。
 被験者は平均70歳の男性で、クレアチンの摂取と同時に週3回ウエイトトレーニングを行ってもらいました。 結果は腕の骨の密度が
3.2%向上したのが確認されました。
 未だ研究の余地がある分野ではありますが、ウエイトトレーニングとクレアチンのコンビが骨の密度を上げるという素晴らしい実験
報告です。

●ライボース●
⇒ライボースは短距離走のパフォーマンスを向上させる
  ほんの数ヶ月前、私はライボースについて値段が高いのと研究が未だ充分でないのが理由でお薦めしなかったのですが、今回
ミーティングでは4つの研究報告が提出されました。 その中の1つは以前紹介したボール大学での競輪選手を対象に行った実験で、
大したパフォーマンスの向上は見当たらなかったというものです。 他にはジョーイ・アントニオ教授率いるグループのライボースの筋力
への影響を実験した例があります。 実験ではライボースを運動前と運動後にそれぞれ5グラム(計10g)を摂るというもので、1ヶ月
に渡り調査されました。 結果はベンチプレスの最大筋力はさほど向上しなかったのですが、しかし同じ重さでも挙げる回数が伸びた
と報告されています。

●HMB●
⇒HMBは筋肉の減少を防ぐ
  ミーティングでは2つの実験例が報告されました。 その1つはポルトガルの研究所で行われたもので、ネズミの片足をギブスで
固定し、筋肉を使えない状態で7日間様子を観るというものです。 実験では20匹のネズミを使い、1つのグループはHMBを1日
0.002グラム与え、もう1つのグループでは何も与えない形で行われました。 結果はHMBを与えられたグループは、筋肉細胞の減少
やダメージが与えられてないグループより少なかったのです。

●アンドロ●
⇒アンドロはエストロジェン(女性ホルモン)を増加し、トレーニングに影響を与えない
  8つの研究報告が提出されました。 アンドロステネディオンがトレーニングにどの様な影響を与えるか興味が持たれましたが、
結果は男性ホルモンの分泌を向上させなかったという例と、男性ホルモンレベルが僅かに増えたが、エストロジェン(女性ホルモン)も
増えたという報告となりました。  何れも運動能力や免疫力、そしてトレーニングからの肉体的めざましい効果は確認されませんでした。

●プロテイン・アミノ酸●
⇒有効性は証明された
  沢山の研究でプロテインやアミノ酸がエクササイズをする上で非常に有効だと報告しています。 どの研究でも、運動前に炭水化物
とプロテインをコンビで摂ると、インシュリンレベルが著しく上がる事が確認されています。 又運動後にアミノ酸と炭水化物をコンビで
摂ると、筋肉分解も防ぎ、同時にタンパク合成が促進される効果も確認されています。 

●L−カルニチン●
⇒筋肉へのダメージを防ぎ、回復力を向上させるかも
  カルニチンは元々体脂肪を燃やすという事で市場で販売されてきたものです。 実験はボール大学により行われ、10人の被験者の
内ある者は1日2グラムのカルニチンを、そしてある者は偽薬を与えられて調査されました。 期間は3週間でスクワットで下半身の筋肉
を鍛えたのです。 実験では運動前、運動中、運動後とそれぞれの血液を採取し、血中のホルモンがどのように変化するかを調査した
のです。 結果はカルニチンを摂取したグループは血中に脂肪酸レベルが非常に低く、同時にインシュリンレベルが上がっていたの
でした。 実験からカルニチンは、トレーニングからの筋肉ダメージを減少し、体脂肪燃焼効果が期待出来ると結論付けられています。

●ビタミンC●
⇒沢山摂取すれば、筋肉の炎症や筋肉痛を減少する
 運動後の筋肉ダメージにビタミンCがどの様な影響を与えるのか調査した報告が3つありました。 先ず1つ目の実験で被験者は、
1日3グラムのビタミンCを摂取し、2週間様子を観たところ、筋肉痛を大きく緩和した事が確認されました。 2つ目の報告はベイリー
教授のグループで、1日800ミリグラムのビタミンCを被験者に9日間摂取させたところ、トレーニングからくる筋肉のダメージを緩和した
事が確認されました。 3つ目の報告はトンプソン教授率いるグループで、1日200ミリグラムのビタミンCを3日間被験者に摂らせた
ところ、目立って筋肉への効果は確認されなかったと報告しています。 この事から、沢山のビタミンCの摂取(1日800ミリグラム〜
3グラム)なら筋肉への効果が期待出来ると考えられます。

●サーモジェネシス●
⇒安全且つ有効!
 体重減を望む人なら一度は聞いた事のある名前エフェドリン。 エフェドリンはカフェインとコンビで摂ると有効性が期待できます。
今回研究ではエフェドリンとサイフリンとカフェインのコンビの製品を15人の女性と5人の男性被験者に摂らせて実験をしました。 
 被験者はエクササイズとし、ウォーキング(有酸素運動)のプログラムを週3回を6週間こなしたのでした。 結果は体脂肪率が大きく
減った事が確認されたのです。

●パイリュベート●
⇒スポーツ選手にとって、目覚しい効果は確認されなかった
  カルシウムパイリュベートは減量サプリとして市場に出回ってきました。 当初パイリュベートから体脂肪減の効果を得るには、摂取
量が非常に多く(1日6〜16グラム)なくてはならないと説明されたものです。 しかし実際販売されている製品には0.5グラム〜2グラム
が1日の摂取量となっており、殆ど効果は期待できるものではありませんでした。 そこでジョージア州立大学で31人のフットボール
選手を対象に、1日6グラムのパイリュベートを摂取させて肉体がどの様に変化するか調査した例があります。 結果は肉体的になんら
影響を与えるものではないという結論に至ってます。

●ベータグルカゴン●
⇒トレーニング中の免疫力を高める
  先日ラスベガス市で開催された国際栄養学のミーティングに参加したのですが、その時あるカウンターでコマンドーの格好をした男
がベータグルカゴンを売ってるのを見ました。 何でも売りは、この製品を飲めばカゼや病気に感染しにくくなるというらしい。 具体的には
ベータグルカゴンは水溶性せんい質で、サウスカロライナ大学の動物実験で免疫力を高める事が確認されたものです。 しかし今の
ところスポーツ選手を対象にこの物質の有効性が確認された訳ではありません。 結論を出すには未だ早いでしょう。

●コーダイセプス●
⇒脂肪燃焼を促進する漢方薬
  Cordycepsは持久力とスタミナを増強させるものと信じられてきた漢方薬の一種です。 中国では数百年も前からこの薬を利用して
きました。 実験では持久力を要するエクササイズで体脂肪がどの様に変化するかが観察されました。 被験者は30人の男性で、
あるグループは1日4.5グラムのコーダイセプスを6週間に渡り摂取し、もう1つのグループは偽薬を摂らされたのです。 
エクササイズは70%の能力で1時間走ってもらいました。 結果は酸素を筋肉と脂肪細胞に送る能力が上がった事が確認されました。
 未だ研究報告が充分ではないものの、コーダイセプスが体脂肪燃焼に有効である可能性は期待されます。

 


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