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  ヘビーウエイトトレーニングは関節を傷めるのか?

  

                            原本執筆:Dr.トーマス・フェイ
                            翻訳編集:S&Fマガジン

ウインブルドン・テニス・トーナメントでおなじみの、クリス・エバートがウエイト・トレーニングをトレーニングに加えていたのは有名で、その後沢山の選手がウエイトを採り入れたものです。 しかしいつも私はそれら人達が、パーシャル・スクワットをしているのに首を傾げるのでした。 彼等パーシャル・スクワットをする人達の考えでは、パーシャルだから膝や関節を傷めずに済むというものでした。

確かに関節は大事にしなくてはなりません。 アメリカでは5千万人の人が関節炎で悩んでいます。 それら症状は、時に激痛をもたらし、鎮痛剤無くして暮らす事が出来ない程です。

コナン・バーリアンだったでしょうか? 「痛み無くして成長はない」と言ったのは?

確かに関節にも言える事ですが、負荷を与えると関節にある軟骨が強くなり、更に潤滑が良くなるのです。 しかし、それにも限度が有ります。 もし過度のストレスを関節に与えると、それら関節にある軟骨が潰れたり磨り減ったりしてしまうのです。

<健康な関節造りへ>

関節にある軟骨は、骨と骨が摩擦で減らない為にあります。 これら軟骨は、血液が供給されない為、シノビアル液 (Synovial fluid)という潤滑液によって、栄養補給と老廃物除去が行われます。 この潤滑液が充分でないと、軟骨が磨耗し、関節炎となるのです。 その破損が大きな場合、修復不可能に陥る事も多々あるのです。

この軟骨への栄養補給をする潤滑液は、常に関節を動かしているから行き渡るのであって、もし関節をギブスで固定するとなると、逆に軟骨に栄養が補給されなくなり、更に状態が悪化する事があります。 例えば、長い間イスに座っていると、膝の関節に充分な潤滑液が巡らないので痛みを感じるのが良い例です。

<科学者の意見は?>

第二次世界大戦中及び大戦後、兵士は脚力を強化する訓練として、ダックウォーク(しゃがんでする歩行)をしてきました。 しかし1960年代、整形外科医がその様なエクササイズは膝に無理な負担をかけ、関節を傷めるとし、コーチに警告したのです。 確かにある意味で理屈の通った意見のようですが、一方でこのエクササイズを否定するだけの科学的根拠は一切無いのです。 そして更にこの意見が延長し、フル・スクワット(深くしゃがんでするスクワット)をすべきではないという意見が定着したのです。

近年ペンシルベニア州にあるDepartment of Orthopedics and Rehabilitationで行なわれたケビン博士の研究では、 ネズミにウエイトの付いたベストを着用させ、レッグプレスを25レップスを2セットさせ、膝にどのような影響を与えるのかを6週間にわたり観察してみました。 研究の結果、ウエイトトレーニングをしたネズミの膝関節の軟骨には、していないのネズミのと違い、ダメージが確認されたのです。 

これは熱烈なエクササイズを長期にわたってした場合、関節炎になる可能性がある事を示唆しているのでしょうか?
一般に関節炎になるのは、ハイインパクトやひねりが関節にかかる運動を続けた場合にありがちです。

有名なフラミンガム研究の共同研究者であるフェルソン氏率いるグループの研究では、関節炎やけんしょう炎になりやすい人とは痩せていて、禁煙者で、肥満である条件が統計で割り出されています。

一方フライズ氏率いるグループの研究では、マラソン選手を長期にわたって調査してみました。 研究の結果、年齢と共に増える関節や筋肉痛は、それら運動と関係ない事が判明しました。

オターネス・グループの研究では、車椅子や寝たきりの動かない生活では、シノビアル液の分泌を低下させ、それが関節の軟骨を破壊するという結果を得ています。 
現在までのところ、適度な運動は関節の軟骨を強く、良いコンディションにするという事が幾つかの研究で報告されているものの、やはり極度のインパクトやストレスが関節にかかるものに対しては、マイナス効果があると認識されています。


<スポーツ選手の立場から意見>

トミー・コノ(Tommy Kono)氏は、ウエイトリフティングで1952年と1956年にオリンピックで金メダルを獲得、1960年には銀メダルを獲得したという業界きっての最も偉大な選手でした。 そんな彼はヘビーウエイト・トレーニングの関節への悪影響など一切考えてもおらず、事実正しいフォームとテクニックがパワーを増加させると説いてきました。
この事について、トミーはこう語ります。 「ウエイトトレーニングのフォームを正しくしていれば、怪我をする事など絶対あり得ません。 もし怪我をするとしたら、それはあなたが間違ったフォームでウエイトを挙げた時です。 実際プロとしてウエイトリフティングをやると、怪我をして正しいフォームの重要性を身に染みて学んでいくものなのです」

オリンピック・ウエイトリフターのジェフ・マイケル選手も、トミー・コノ氏の意見に以下の様に同意します。
「私は、ウエイトリフティングを25年間続けて来ました。 その中の20年間は選手としてウエイトを挙げて来ました。 トレーニングは1週間4日〜6日のペースで続けて来ましたが、大きな怪我など一度もした事が有りません。  たとえしたとしても、それらは大抵腰や肩ですが、ストレッチをすれば治ったものです。 膝の関節に関しては、一度も
問題を起こした事は有りません。 むしろ起こすなら、腱(けん)を傷めるくらいです。  現在38歳ですが、今でもフルスクワットとスナッチ、そしてクリーン&ジャークもします。 その結果言える事ですが、私と同じ世代の者と比べ、私の体調はすこぶる良く、関節に痛みなど感じた事もありません」

上記の意見に対し、人体工学を研究するジャッキー・ハドソン教授も同意します。
「運動を継続する人に言える事ですが、正しいテクニックで行っている以上、運動をしていない人より怪我をする確立は低いものです。 またフルスクワットに関しても、パワーリフティング競技の様に、太ももが床と平行ラインを超える程深くしゃがんでも、これらは膝の関節が許容できる範囲内なのです。 問題は扱えない程の重いウエイトを担ぎ、そのウエイトを緩和しようと無意識に体をひねったりした時、怪我が起きるのです」と。

<関節を守るポイント>

沢山の研究報告や科学者の意見を基に、幾つかのポイントを最後にまとめました。 以下の要領を心得た上で、ヘビーウエイトを扱えば、怪我になる可能性は低くなるでしょう。

 1.正しいフォームで力いっぱいウエイトを挙げる
 2.ウエイトを持ち上げるの際は、腰ではなく脚で挙げる
 3.デッドリフトのようなウエイトを床から挙げる場合は、ウエイトが体の側を通るように挙げる
 4.背中を常に反らす
 5.ウエイトを挙げる時は、決して腰や膝を捻ったりしない事

 更に怪我をした場合は、完治するまでトレーニングの開始を待ちましょう。

         


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